粟島酒造AWASHIMA SHUZO

01-1 — Shrine

少彦名社

仕込み蔵の裏手、杉の木立の下に建つ小さな社です。常世暦六十三年、大火からの再建にあわせて建立しました。

もとは、初代が置いた簡素な祠でした。常世暦六十一年の大火で蔵の主要部を焼失した際、六十三年の再建にあわせて、改めて社として建立し直しています。

大火は隣家からの出火でした。仕込み蔵、麹室、貯蔵蔵のほとんどを失い、当時の二代目・久蔵は廃業を考えたと伝えられています。再建できたのは、近隣の蔵元と潮路杜氏衆が人と道具を出してくれたためでした。

焼け跡に残ったのは、祠と、初代が使っていた木桶がひとつだけでした。その桶は今も槽場の隅に置いてあります。使ってはいませんが、動かしたこともありません。

大火に残った初代の木桶
初代が使っていた木桶。焦げの跡がそのまま残っています。

Prayer

仕込み前の祈念

新酒の仕込みに入る前、蔵人一同でこの社に参り、良い酒が生まれるよう祈念します。例年は霜月のはじめ、蔵洗いと道具の点検を終えた翌日に行います。

この習わしは、六十三年の再建のときに定められたものです。以来六十年、一度も欠かしていません。四代目が路線を大きく変えたときも、この日だけは動かしませんでした。

祈念に用いる酒は、その年の仕込みから取り分けます。それを少量だけ瓶詰めしたものが、銘柄「少彦」です。

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Carving

羅摩船の木彫り

社の脇には、言い伝えに登場する天の羅摩船を模した木彫りが納めてあります。掌ほどの大きさの、粗い彫りの小舟です。

誰がいつ彫ったものかは分かっていません。大火のあと、焼け跡の片づけをしていた蔵人が見つけたと伝わっています。祠と一緒に残っていたということ以外、由来を示すものは何もありません。

蔵の見学にお越しの際は、この木彫りをご覧いただけます。

羅摩船を模した木彫り
羅摩船を模した木彫り。彫った人も年代も分かっていません。

Miki

白酒と黒酒

新嘗の祭に供える神酒には、白酒(しろき)と黒酒(くろき)の二つがあります。当社は毎年、霜月の祈念にあわせてこの二つを少量だけ用意し、少彦名社に供えています。売り物ではありません。

Shiroki

白酒 — しろき

搾ったままの、濁ったにごり酒です。手を加えません。その年の仕込みから、最初に垂れてきた分を取り分けます。

Kuroki

黒酒 — くろき

白酒に草木の灰を加えて、色をつけたもの。当社は蔵の裏の椎の木を焼いた灰を使います。灰を入れると酒が長持ちする ── その知恵が、祭のかたちとして残ったのだと思います。

Kagami-nagashi

羅摩流し

旧暦八月、粟島町では「羅摩流し」という行事があります。粟の茎で編んだ小舟を作り、灯りを載せて入江に流す。少彦名命が常世へ帰っていった故事にちなむものです。

当社は毎年この行事に奉納酒を納めています。銘柄は「粟島」と決まっていて、これは二代目の代からずっと変わりません。町の行事に蔵が関わるのは当たり前のことで、特別に語ることでもないのですが、蔵の一年のなかではこの日が区切りになっています。